但馬空港合宿記

(日本モーターグライダークラブ会報ウインドソックNo.70より)
但馬空港で行われた3クラブ合同合宿(但馬飛行倶楽部、くるくるクラブ、そして我がJMG C)が、時期が二転三転したあげく、9月10日(火曜日)から17日(火曜日)まで、14、15日 の但馬の空港祭に引っかけた一週間で行われたことは、皆さんご存じのことと思います。ほぼ 全日天候に恵まれて、参加者全員が心ゆくまでフライトやそのほかのイベントを楽しんだ一週 間を、ご報告したいと思います。

初日
二日目
三日目
四日目
五日目
六日目
七日目
八日目
九日目
参加された皆さんのお言葉

<9月10日 初日  曇りのち急速に回復>
 出発当日の午前中はほとんど絶望的で、ちょっとした思惑のあったスタッフ約一名(仮に「 Nさん」とでもしておきましょう)は、できれば出発を翌日に延ばしたくて、天に曇天あるい は雨の恵みを願っていたのでありました。しかし、やはりちょっとした思惑を胸に秘めたスタ ッフ約一名(こちらは「Hさん」としておきましょうか)は、心の底からオン・スケジュール を望んでおり、天に日輪の恵みを願っていたのでありました。もちろん合宿に参加するクラブ 員の皆さんが、すぐにも機体に乗り込んで、出発のための暖機運転をしたくてウズウズしてい るのは言うまでもありません。出発を延ばしたかった約一名も、多勢に無勢と覚悟を決め、先 達役のキャラバンもいることだし、合宿を盛り上げるには初日が肝心と思い直し、その気にな ってウエザーを改めて見直してみると、
「なんとか行けそうジャン。但馬までは無理でも、福井空港あたりまでなら行けるぞ」
 ということになり、予定通りの出発というめでたきを得たのでありました。
 9月10日午前11時、「しゅっっぷヮーつ!!」とばかりに、若干ヤケクソ気味に元気よく大利 根飛行場を離陸した一番手は、出発を渋っていたNさんことアイちゃんの(あ、バラしちゃっ た)セスナ・キャラバンでした。冬の暖かい室内を思い起こさせる灯油ストーブのようなにお いを撒き散らし、午前11時、キャラバンはその巨体をゆすりながら離陸、上昇していったので した。続いて、順番は忘れましたがRF5が1機、グローブG109Bが2機、ディモナが 1機、 そしてパイパー・アーチャーが1機、次々と離陸していきました。その様子は、不揃いなカル ガモ親子の行列みたいでした。
 もっとも、キャラバンとモーターグライダーでは速度がだいぶ違いますから一緒に飛ぶこと はありませんが、そのかわりキャラバンが先頭を切り、雲の様子やコース取りを後続機にアド バイスしました。コースは大利根から松本空港、福井空港、そして但馬空港です。雲は、松本 に近づくにつれて減り、天気は次第に良くなってくる感じでした。切れぎれの雲はあまり高く はなかったので、雲の上の、すっきりとクリアなところを飛ぶことにしました。
 松本空港では給油のため、午後1時前、キャラバンに続いて全機が一端着陸しました。人間 の方も少々お腹が空いたので、エアラインの搭乗待合室内のスタンドで、おねーさんに頼み込 んで十数個のハンバーガーや缶コーヒーなどを買い込み、機内食としました。
 松本空港では、モーターグライダーの一団とちょうど着陸のタイミングが重なってしまった エアライン機が使用滑走路を勘違いしたり、そのためにホールディングをかけられていたモー ターグライダーが、レディオから指示されたホールディング・ポジションをズルズルと移動し てしまったり、着陸の順番をかってに変えてしまったりして、管制通信官は若干ムカついてい たようでした。
 そこへ折悪しく、全機分のフライトプランを入れに行った久野くんは、なにやら小言を言わ れたようでした。そういう星の下に生まれついているのか、苦情の言い甲斐があるように見え るのか、彼自身は何もしていないのに、わりと苦情処理係のようになってしまうようです。
 松本での給油が終わり、午後1時40分、福井に向けてイザ出発。福井方面の天気もだいぶ良 くなってきたようでした。もしかして今日のうちに最終目的地である但馬まで行けるかもしれ ないという雰囲気も出てきました。しかし但馬からは、5時ぐらいには到着してほしい、との 要望があります。行けるか行けないか、その分かれ道は天候よりも時間的要素にかかってきま した。やむを得なければ福井泊まりでも良い、でも行ければ但馬まで行ってしまいたい、とな るとつい、気持ちはせいてきます。足の遅いモーター組は、時速150qで巡航する計算だ ったの ですが、気がつけば、拍車がムチを当てられた馬のように、時速170qで飛んでいました 。
 松本を後にしてからは、進路は北です。穂高、白馬を左に見て、日本海に臨んだところで西 に変針、海岸線を愛でながら一路福井空港へ。青い海の上を飛ぶモーターグライダーや飛行機 は昼下がりの日光にきらめいて、それはそれはきれいでした。
 学生航空連盟の一基地でもある福井空港到着は、3時30分。ここでもキャラバン以外の機体 が給油をしましたが、松本で満タンにした後、2時間弱飛んだだけですから、実のところ燃料 はあまり減ってはいません。でも、但馬は遠いし、RF5はあまり大きなタンクを積んでいな いので、ここでの給油は必要です。
 福井空港のグラスエリアでは学生たちが飛行機曳航でグライダーの練習をしていました。そ して学連の責任者であり教官でもある田口さんが、にこやかに出迎えてくれました。福井に一 泊していけばいいのに、という気持ちがうれしくて、クルー全員が一瞬心を動かしかけたので すが、但馬でも待っていてくれる人たちがいることを思い出し、福井ステイは断念しました。  ウエザー・チェックやプラン・ファイル、ジュースを飲んだり田口さんとおしゃべりしてい る間に給油をしたのですが、燃料屋のおじさんは、
「あれま、こんなたくさんの機体全部に給油するのかい。いま燃料車には100リッターが そこら しか入っていないから、ちょっと待ってな。燃料足してくるから」
「いえ、あのー、数は多いけど、100リッターで充分足りると思いますよ」
「そーはいかねーだろ」
 結局、全機満タンにしても、80数リッターで用が足りてしまいました。ね、だから言ったで しょ、おじさん。
 福井ではもっとのんびりしていたかったのですが、但馬までの天候はますます良くなり、時 間も迫っていたので、4時には但馬へ向けて、次々離陸していきました。福井空港の若い管制 通信官は、6機の矢継ぎ早の離陸に一つも面倒くさがらず、一機ごとに「HAVE A NICE FLIGHT 」と、別れの挨拶をしてくれました。この一言がうれしいんです。この一言が、パイロットを 安全飛行に導くのです。
 さあ、福井空港から但馬空港まではもうひとっ飛び。このレグで一番良いコース取りは、若 狭湾、舞鶴湾を抜けていく直線コースです。しかし教官たちは、クラブ員のみんなは海の上を 長く飛ぶのにあまり慣れていないから精神的につらいのではないかと思い、海岸線よりに飛ん でいくことを考えていました。でも若狭湾の湾岸には、自衛隊の訓練空域や、原子力発電所が あります。そのため航空自衛隊の岐阜基地などあちこちに連絡をして、コースの調整をしてい ました。ところが福井を離陸してみると、若狭湾の海岸線に沿って雲がペタッとはりつき、逆 に洋上はきれいに晴れ渡っていました。それなら回り道はしないゾと最短コースを取り、カル ガモ親子のような一団は若狭湾を突っ切っていくことにしました。皆、焦っているわけではな いのですが、最終目的地を目前にして、巡航速度がまた少し上がったようでした。
 宮津のあたりから陸地に入ると、但馬空港はもうすぐです。モーターや飛行機のクルーたち はそれぞれに航空図を見ながら、空港がある場所の見当をつけ始めました。しかし皆、もう見 えても良い頃だと思いながらも、なかなかみつけることができません。それもそのはず、航空 図をよーく読まないと、但馬空港は低い平地にあるように見えるのですが、ほんとうは山の上 にあります。中にはほぼ直上まできて、やっと気がついた人もいました。
「だぁから言ったでしょ、ボクが作って各機ごとに備え付けておいた資料を見ておいてねって 。それを見れば、但馬空港が山を削った高台にあるってことがすぐわかるのに」
「え、資料? そんなもの、あったの? そーかー」
「ガクッ」
 几帳面な久野くんの地道な啓蒙活動も、のんきに育ったクラブ員相手では(教官たちも同様 ですが)、なかなか成果が上がりません。
 さて、5時過ぎに全機着陸したあとは、但馬飛行倶楽部の白石キャプテン(但馬飛行倶楽部 の親分であり、本職は全日空でB747を飛ばすキャプテンです)に指揮してもらい、指定 された 場所に係留して、大利根からのフェリー・フライトを終えました。大利根〜松本 234q、松本 〜福井 280q、福井〜但馬 177q、合計 691qのロング・フェリーでした。
 このあとは皆、心地よい疲れを楽しみながら、空港からクルマで30分のペンション「あほう どり」に送ってもらい、近くのレストランで夕食をとって、お開きにしました。

<9月11日 二日目  晴れ>
 朝食を済ますとペンションでクルマを借りて、登ったり下ったり急なカーブの山道を30分走 って、但馬空港に到着。かねてから借りてあった、広くて立派な会議室に陣取ると、お帳場を 広げ、ホワイトボードを用意して、会議室はクラブルームに早変わり。この日のブッキングの 開始です。
「はーい、飛びたい! 飛びたい! どこでもいいから行きたーい!」
「はーい、あたしも! あたしも!」
 妙に無邪気なこの騒ぎは、子供の遠足さながらです。
「ぼくは、隠岐にいきたいな」
「ぼくも行く」「あたしも行くー」
 みんなでワイワイやりたい気持ちと、大利根から遠く離れた場所で飛ぶ不安感とが入り交じ ってか、キャラバンも含めて全機が隠岐へ行くことになりました。ウエザーをとり、航空図に 線を引き、フライトプランを準備すると、会議場のあるターミナルビルから滑走路を挟んだ反 対側にある、駐機場へ向かいます。
 但馬空港は滑走路を横断することが禁じられているので、宿から借りたクルマで空港の外側 を回って行かなければならないのが少々厄介でした。でも順応性の高いみんなはエアバンドラ ジオと携帯電話を使って、まもなくスムーズにクルーの交代をすることができるようになりま した。
 さて、飛行前点検と暖機運転をそれぞれにすすめ、ディモナ、グローブ、RF5、アーチャ ーそしてキャラバンが順に出発するようになりました。一番手のディモナがタキシングを始め て滑走路に入ろうとしたのですが、途中で立ち往生。原因はトンビでした。食べ物が豊富なの か、巨大なトンビたちが恐れもしなければ退きもせず、行く手を阻んでいます。エンジンをフ ルパワーにしておどかそうとしても、平気な様子で滑走路の上にたたずんでいるのです。仕方 がないので、こちらがトンビをよけて蛇行しながらエアボーンする始末でした。
 ところが、やっぱり、舞い降りてきたトンビがディモナのプロペラの先端に接触し、墜落。 トンビは致命傷を負い、昇天してしまいました。ディモナには、プロペラにはチョトうるさい 金子さんが乗っていたので、即座にダメージなしと判断してそのまま上昇していきましたが、 滑走路は目が××印になってしまったトンビを回収するため、少しの間クローズになりました 。
 滑走路でそんな騒ぎをしている間、もう一つトラブルが起きていました。キャラバンです。 獣医の鈴木さんとあいちゃんが長々しいチェックリストを手に離陸前点検をしていたのですが …
「あっれー、フラップが動かないや」
 あいちゃんはしばらくあちこちをチェックしていましたが、部品を一つ交換しなければ直ら ないことが判明。キャラバン組は隠岐行きをあきらめて、部品を交換するための下準備に取り かかりました。
「ごめんね、鈴木さん。貴重な一日を無駄にさせちゃって。部品は明日にならないと手に入ら ないんだ」
「いやいや、いいっすよ。仕方ないっす」
 開業医の鈴木さんは、連続休暇が取れないのです。
 そんなことをしているキャラバンをしりめに、モーターと飛行機は隠岐目指して離陸してい きました。彼らは隠岐諸島をぐるっと一周したのち着陸してそこで昼食を取り、帰りがけに鳥 取砂丘を眺めて但馬に戻ってきました。
「日本海も隠岐諸島も、キレーだったねー!」
「ほんと、すばらしい眺めだったね」
「でも、有名な鳥取砂丘があんなに小さくて、子供のお砂場みたいに見えたのには驚いたなあ」
「ふーんだ。結構な景色が見られて、そりゃあ、ようござんしたねえ」
「あ、美幸さんも鈴木さんも行けなかったんだっけ。でもほら、まだ二日目だから、チャンス はあるよ」
「慰めてくれて、ありがとう。でも鈴木さんは今日帰らなきゃならないし、アタシはこれ以降 、ずーっとお帳場にはりついてなきゃならないの」
「そりゃ、残念」
「べーっ」
 ところで、この日の夕方、あいちゃんは九州へ行かなければならない用事がありました。翌 日に予定されている、大分空港にあるG109Bの耐空検査です。当初の予定ではキャラバ ンで大 分に乗りつけるはずだったのですが、アーチャーに変更して、今日帰らなければならない獣医 の鈴木さんを高松空港に送りがてら、飛行機の練習を始めた消防庁の加藤さんを乗せて、大分 に向かいました。

<9月12日 三日目  晴れ >
 10日の長距離フェリーと11日の隠岐ツアーで自信がついたのか、この日はそれぞれ鳥取、天 橋立、京都、明石など、好きなところへ出かけていきました。みんな、大利根で飛んでいると きよりも、ずっと距離を伸ばしています。
 また、関東地方ではあまりできないIFRの練習をしている人もいました。但馬飛行倶楽部 の白石キャプテンから、もし希望者がいれば、とお誘いをいただいたのです。エアラインのベ テラン・キャプテンとビーチクラフト・ボナンザという組み合わせがあったら、ご厚意を無に する手はありません。
 その間久野くんは、今日から参加する教官の小林英次さんを迎えに、モーターで鳥取まで出 かけていきました。小林さんは全日空の整備士なので、全日空機が乗り入れている、但馬に近 い空港まで来たのでした。それが鳥取です。
「あら、鳥取まで迎えに行くの? それなら行きの空席を私がうめてもいいかしら。鳥取砂丘 を少しゆっくり眺めてみたいと思っていたの。もし、後で迎えに来ていただけるなら、の話だ けど」
 これは小林初美さんでした。結局、この件で久野くんは二人の小林さんを乗せて、但馬〜鳥 取間を二往復したのでした。
 一方、大分のあいちゃんは昼までに耐空検査を終えて、今度は八尾空港に向かいました。合 宿に参加するくるくるクラブの寺本さんをピックアップするためと、調布から八尾に届けられ ていたキャラバンの部品を受け取るためです。空港や飛行場の中だけで済むこのような用事な ら、飛行機は本当に便利です。
 そんなこんなで、キャラバンを復帰させる部品と一等航空整備士の小林英次さんが揃ったと ころで、あいちゃんはさっそくキャラバンのフラップ作動装置の修理に取りかかりました。見 えにくいところの修理だったのでちょっと難航したようでしたが、夕方には作業を終わり、テ ストフライトも順調に済みました。

<9月13日 四日目  雨のち曇り>
 なか日に差し掛かり、みんな少し飛び疲れて来たところで雨が降り、ちょうど良い休みにな りました。久野くんと寺本さんはこの機会を利用して、白石キャプテンにボナンザでIFRの 訓練をしてもらうべく、イソイソと出かけていきましたが、残りの人たちは洗濯もしたいし、 せっかく但馬まで来たのだからあちこち見て歩きたいし…というわけで、宿で借りたクルマ2 台に10名あまりが分乗し、豊岡や城崎に出かけました。
 まず、豊岡でコインランドリーを探して洗濯。次に、同市内にある「かばん団地」というと ころに行きました。豊岡は全国でも飛び抜けて鞄の生産率を誇る町だそうで、製造と卸のほか に、観光客向けの小売りもしています。「かばん団地」でのみんなのお目当ては、言うまでも なくパイロット鞄。縫製は丁寧で種類もあり、値段は一万円前後です。みんな目の色を変えて 、物色していました。
 その次に行ったのは、温泉と新鮮な魚介類で有名な城崎です。でもここでは温泉には入らず 、水族館に行きました。
「おいしそうな魚がいっぱい泳いでいるね」
 などと言っていたら、水族館の一施設である居酒屋風のお食事どころがあったので、そこで 遅い昼食を取りました。
「この魚、新鮮でおいしいけど、さっき泳いでたのとちがう?」
 水族館の魚かどうか、真偽のほどはわかりませんが、なかなか結構な活魚料理でした。 こ んな、とりとめのない時間を過ごしているうちにIFRの訓練も終わる時分になったので、 買った鞄を撫でながらニコニコしている一団は、久野くんと寺本さんを迎えに但馬空港に向 かいました。練習を終えた久野くんに今日の成果を訪ねると「まだコツをつかんでいないので 、VFRからIFRへ切り替えた途端、バーティゴ(空間識失調)に陥ってしまった」と白状 しました。
 この日はこのあと、但馬飛行倶楽部の人たちの案内で、地元の人たちが「穴場」だという「 シルク温泉」に浸かり、夜は但馬飛行倶楽部が、くるくる、JMGCの歓迎会を催してくれま した。会場は、町で一番おいしいという、大きな店構えの「皿そば屋さん」でした。皿そばと いうものを、皆さんはご存じでしょうか。もりやざるのようなつけそばなのですが、それが手 のひらに収まるくらいの小皿に軽く盛ってあり、次々とお代わりをして、空いたお皿を積み重 ねていくのです。JMGCのみんなは物珍しさもありチビチビとやっていましたが、但馬飛行 倶楽部の面々は豪快に飲み、かつ食し、昼間より数段パワーアップして、朗らかに場を盛り立 ててくれました。

<9月14日 五日目  晴れ>
 土日にあたる14、15日は、但馬の空港祭。空港のフェンスの外側では近隣の人たちが一角で バザーのようなものを開いていたり、バンド演奏があったりで賑やかでした。但馬のラジコン 愛好会の人たちが作った、鳥人間コンテストの優勝機も展示してありました。またフェンス内 も、ターミナルビル寄りの駐機場が解放され、但馬機、くるくる機、JMGC機などの地上展 示を、だれでも近くで見られるようにしてありました。この日、ジョイフライトはできません でしたが、但馬からの要請で展示飛行を行いました。また、阿見飛行場から飛行機が3〜4機 飛来し、広島の飛行クラブの人たちも訪れていました。
 そして夜ともなると、またまた宴会です。数十名がホテルの宴会場に会しました。形容し難 い強烈なオーラを発する、全日空の白石キャプテン、同清水キャプテン、そして整備士の谷口 さんなど、芸達者揃いの但馬飛行倶楽部の面々のおかげで爆笑のうちに宴会が始まり、挨拶や 自己紹介ののちに、爆笑のカラオケ大会へと進みました(ちなみに、滅多に聞けない見事なフ ァルセットの歌声で、笑いきれないほどの爆笑とやんやの喝采をいちばん取った久野くんが、 並みいる強者を引き離して、大会の一等賞になりました。妻の正子ちゃんは終始他人の顔をし ていたようですが、あいちゃんはいたく感心して「久野はエライやつだ、たいしたモンだ」と 言っていました)。そして最後に、クラブ同士の親睦がはかれたことを祝いあって、怒濤逆巻 く宴会はお開きになりました。

<9月15日 六日目  晴れ>
 朝、空港にみんなが到着すると、「遊びに行くね」と言っていた整備の三田さんがすでに私 たちを待っていました。そしてこの日は地上展示をしなくても良かったので、展示飛行のとき 以外は自由に飛ぶことができた…のですが、ほら、よく小さい子供たちが、遊んでいる最中に 転んでも泣かずに我慢するのに、親の顔を見たとたんに緊張の糸が切れて泣き出しちゃうこと があるでしょう。JMGCの機体も、それと同じ反応を示すってこと、ご存じでしたか?三田 さんが到着したこの日、2機のG109Bが揃いも揃って速度計アウトになり、その上、松山 から飛んできた宮崎さんのチェロキーがオルタネーターの故障を起こし、エンジンがかからな くなってしまったのです。
 遊びに来たはずの三田さんですが、来るなり修理の仕事が回ってきてしまいました。G109B のほうは、ピトー管からきているチューブに水が詰まっただけだったので、あいちゃんと久野 くんの二人で「やだなー、間接キスみたいでキモチわりー」と言いながらチューブ内の空気を 吸ったり吹いたりして直してしまいましたが、チェロキーのほうは、そうはいきませんでした 。三田さんはずいぶん時間をかけて直してくれようとしていましたが、部品を取り替えれば直 る、でも但馬にはその部品がない、と言うことで、宮崎さんのチェロキーはしばらくの間、但 馬にステイすることになりました。

<9月16日 七日目  晴れ>
 今日は晴れ、大利根に帰るはずの明日はほぼ間違いなく雨。と、最初からわかっていたので 、一日繰り上げて今日のうちに帰ってしまうのが無難な策ではありました。でも、良く晴れた 青空を眺めているみんなを見てしまうと、あいちゃんも「今日帰ろう」とは言い難く「えーい 、なるようになるわい!」と、合宿の日程を延長する覚悟で、この日もおおいに飛びました。  全日参加という驚異の勤め人、気象庁に勤務するさんとコンピューター関連会社に勤務 する畠中さんの男女ペアを除き、たいていの人は二泊三日か三泊四日が限度。そして45名のク ラブ員が入れ替わり立ち替わりの参加ですから、合宿が終盤にさしかかっても参加者のテンシ ョンは下がらないのです。前出の男女ペアも「だって、飛びに来たんだモン」と言い放ち、ペ ースは落ちません。考えてみれば、但馬の周辺にはローカル空港があちこちにあるし、山あり 、海あり、風光明媚な名所もたくさんあります。このような環境が、関東地方のアマチュア・ パイロットたちを楽しませないわけがありません。
 実質的な合宿最終日は、こうして暮れていきました。

<9月17日 八日目  雨のち曇りときどき晴れ>
 ペンション「あほうどり」の部屋の窓から見える但馬の空は雲にベッタリと覆われ、雨がし としと降っていました。
「とりあえず、豊岡駅まで戸加里さんを迎えに行くね」
 百里基地の管制官である戸加里さんは、帰りのフェリーだけの参加者でした。戸加里さんも 今日の但馬の天気はわかっていたのですが早いうちに出発し、見切りをつけて帰った人たちと 入れ違いに、傘を持って現れました。
 そのあいだ教官たちは、いくらかの望みがあるかと但馬空港にウエザーの問い合わせなどを していましたが、200以上の雷が落ちていると聞き、この日の出発はきれいさっぱりとあ きらめました。
 それなら一日遊ぼうということになり、13日にパイロット・ケースを買えなかった久野くん や、週末から参加したクラブ員といっしょに、もう一度「かばん団地」へ行きました。それか ら、「よっぽどヒマなときに行くといいよ」なんてことを誰かが言っていた「植村直己館」を 見学。大勢でゾロゾロ行ったのがよかったのか、ディスプレイも凝っていてけっこう面白かっ たですよ。そして記念館を出る頃には雨もすっかり上がり、晴れる兆しが見えてきました。
 夜になると、翌日のための検討会を開きました。つまり、どのペンションにもある多目的部 屋にゴロゴロしながら天気予報を聞き、琵琶湖コースで行くか、東海コースで行くか。RF5 は航続距離が短いから、給油をどこでするかなどの翌日の予定を立てたわけです。あとは、但 馬を離陸できるかどうかです。

<9月18日 九日目  下界は曇り、天上は晴れ>
 下界から見たところではあまりパッとした天気ではなかったのですが、飛べる可能性はなん とかありそうでした。
但馬空港でウエザーを調べたのち、帰りのルートは東海コースに決定しました。但馬から京都 を通過して河和VORへ、そして浜松を経由たのち、キャラバンとアーチャーはそのまま横浜 、東京、千葉を抜けて大利根飛行場へ。しかしモーターは、全機がいったん三保飛行場に着陸 することにしました。RF5が、但馬〜三保間で80%の燃料を消費してしまうので、給油をし たいからです。でも、少しばかりの給油に人の手を煩わすのも…と、2機のG109Bから 数リットルずつ分けてもらうことにしたのです。
 さて、はっきりしない空模様の下界から空港に移動してみると、まずまずの天気でした。お 世話になった但馬空港の各職員の方々や但馬飛行倶楽部の皆さんに挨拶をし、離陸前の最終ウ エザー・チェックを済ませれば、あとは帰途につくばかり。飛行前点検と暖機運転をして、ア ーチャー、キャラバン、モーター各機の順に、午前10時、但馬空港を離陸しました。
 離陸直後、私たちを八日間楽しませてくれた但馬空港を振り返ると、山を切り開いて作られ たそれは、淡い雲海の中に、ポッカリと浮かんでいるかのようでした。
 帰路も順調に、お互いの位置を連絡しあいながら飛行しました。でも、モーターにはDME もついていないのに、その位置報告が妙に素早く、妙に細かいのです。
「大津VORから5.1マイルでーす」
「河和VORの4.5マイル手前にいまーす」
 そう、みんなGPSを持っているのです。今回の合宿でみんなが積極的に行動半径を広げる ことができたその陰には、GPSの貢献が少なからずあったようです。航空法で認められた航 法計器ではないかもしれませんが、もうすでに、安全なロング・ナビのための必須アイテムと なっていることは間違いありません。
 さて、何事もなく、ただひたすらフライトを楽しんだ但馬合宿も、いよいよおしまいです。 大利根に近づくにつれ、ホッとするような名残惜しいような、複雑な気分になります。寄り道 をしないで大利根に直行したキャラバンそしてアーチャーは、午後1時半前後に着陸。次いで 、予定を変更して三保に立ち寄らずに帰ってきたディモナも着陸。そして2時半前にRF5と 2機のG109Bが相次いで着陸し、フライトプランをクローズして、八日間にわたる合宿 を終了しました。

   今回の但馬合宿は、以前おこなった北海道合宿に次ぐ長期合宿でしたが、北海道の時と同様 に、天候をはじめ、いろいろなことに恵まれました。くるくるクラブの寺本さんたちがつない でくれた、但馬飛行倶楽部の皆さんたちとの交流も、これを機にますます深くなることと思い ます。

この合宿に関わったすべての皆さん、どうもありがとうございました。そして、お疲れさま でした。


【ほんの一部ではありますが、参加した皆さんの一言】
・並木重光さん(10日〜12日)
「隠岐や京都なんて、合宿だから行けたんだと思う。畠中礼子ちゃんと三日間一緒に飛んで、 うれしかったやら、楽しかったやら、疲れたやら…最後には、どこか通じるものが生まれたよ うな……?? 10時間30分ぐらい飛んだけど、ほんと合宿っていいね。自分だけじゃ行けない ようなところに行けるから。みんなと一緒の安心感もあるし。これからもできるだけ参加した いな」
・野村隆一郎さん(15日〜17日)
「一日、雨が降ってしまって残念でしたが、それ以外はバッチリ! 思っていたよりもたくさ ん飛べて良かったです。6時間ぐらい飛んだかな。天橋立や鳥取砂丘も見たし、タッチ&ゴー もしたし。すばらしかったなあ」
・くるくるクラブ 野田廸郎さん(14日〜16日)
「北海道以来3年ぶりの合宿だったけど、とても楽しかった。但馬はよく行くけど、あんなと ころは他にないし、ほんとにおもしろいスタッフが揃ってるね。地元勢の結束が堅くて家族的 なのもいいよね」
・戸加里孝司さん(17日〜18日)
「山あいを縫って飛ぶのが気持ちよかった。福島空港しか行ったことがなかったので、この合 宿でロング・ナビを経験できて良かった」
・高田浩章さん(14日〜18日)
「但馬飛行倶楽部のスーパーデカスロン、楽しかったです!帰りの、アーチャー一人フェリー も楽しかった! 全部で12時間飛びました」
・島根俊夫さん(14日〜17日)
「モーターで3時間30分、デカスロンで30分飛んだけど、ちょっと物足りなかったかな。18日 までいられず、帰りのフェリーができなかったのが残念だった。でも、但馬の清水キャプテン と、デカスロンで宙返りしながら日本海の海の底を見てしまったんですよ! あれが何ともす ばらしかったなあ」
・井下田春雄さん(15日〜18日)
「合宿には始めて参加したけど、天気も良くてとても楽しかったねえ。但馬をベースにして、 あちこち行けたのが良かった。でも18日にはぼくと同年代のクラブ員があらかた帰っちゃって 若い人しかいなかったから、ちょっと寂しかったな。ぜひ次の合宿も参加したい」
・杉浦栄治さん(15日〜18日)
「原発巡りと、天橋立に行ったのと、帰りのフェリーで6時間30分飛びました。但馬では、や けにビールが美味しかったな。帰りに三保に降りたのも、なんかワクワクして楽しかった」
・スダチさん(全日参加)
「えー、オホン。合宿の成功は、ひとえにこのボクの行いの良さですねー。全部で14時間飛び ましたが、隠岐、鳥取、天橋立、姫路城、明石大橋と、いろんな飛行場や場所に行けて楽しか った。帰りのフェリーで着陸した三保飛行場には感動しました。だって、大利根みたいに小さ くて、安心して降りられたから」
・室岡英夫さん(14日〜16日)
「たいへん、素晴らしかったです。これを、我が教え子たちの言語を用いて表現すると『ちょ べりぐ』と、なります。……なんてこった」

Web masterより・・・・。
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