日本滑空協会より緊急提言 (2005.7.30)
平成17年7月29日
社団法人 日本滑空協会
会員各位
ご承知のように、今年に入り人命にかかわるグライダー事故がすでに三件発生し、四人の方々の尊い命が失われました。グライダーを愛する者の集まりである当協会として、亡き四人の方々に改めて深く哀悼の意を表します。
このような異常ともいえる状況の下で、こうした事故の発生を未然に防止するため最大の努力をすることが、わが国グライダー愛好家のすべてに課せられた重要な責務であると痛感いたします。
「飛行の安全を第一に考える」ということは、誰しも熟知し、しばしば口にもするところであります。しかし実際に自分自身の行為や意識を率直・冷静に振り返ると、原因や理由はそれぞれあるにしても、ときに「安全第一」ではなかったと思わざるを得ないこともあるでありましょう。
「飛行安全」は私たちにとり「神」のようなものと言えます。「神」の前には自分の無知や能力の不足を隠してはならないと思います。「神」のためには、それを信ずるがゆえにいろいろなことを犠牲にしなければならない時もあるでしょう。
この際、一人ひとりが自分自身の問題として、「飛行安全」とどう向き合い、どう取り組んでいくのか、真剣に考えてみるべきだと信じます。
例えば、今から乗って飛ぼうとしている機種について知るべきことはすべて把握しているでしょうか? 失速に近づいた時の各舵の効きの変化は? 旋回中やサイドスリップ中の失速時の挙動は? ダイブブレーキを操作したときのピッチングの変化は? スピンからの回復操作は重心位置により影響されるのか、エレベーターは何時どう使うのがベストな回復操作なのか? 突風の状況とウィンチ曳航速度はどうすべきか? 等々訊かれると正確に答えられないことはないでしょうか。ここに挙げたようなことは機種によりみな違うことはご承知のとおりであります。またものによっては同一機種でも号機により癖の違うこともあります。
またそれぞれの機体の運用限界条件に近づいた時の機体の挙動や特性も把握しているべきでしょう。
一日に二機種以上乗る時などは装備品の違いも誤りなく把握していなければなりません。そしてそれらを少しの誤りもなく操作できるよう日頃いわゆるコックピット・トレーニング等もきちんとやっておくべきでしょう。
他にも心がけるべきことは整備や点検あるいは心身の状態などの面を含め数多くありますが、マニュアルや資料を調べ、教官や先輩や同僚にたずね、適切なトレーニングを行い、自分自身すべてやったと思えないときは、決して「準備良し」は言わないことを身に付けるべきであります。
もしかすると、こうしたことを徹底すると発航回数が減ったり、より良い成績を挙げられるチャンスを逃したりすることもあるでしょう。しかしそれは「神(飛行安全)」の前に捧げるべきことなのだと思います。
会員一人ひとりの、飛行安全意識の一層の向上が、飛行安全の実現として実を結ぶのには、特に滑空団体や滑空場の管理者、指導者、教官の強力なリードが極めて大切なことは、皆様よくご存知の通りであります。
どうかそれらの重責を担われた方々はこれまでにも増して体制の整備、管理、指導の徹底に力を注いで下さり、会員の安全意識の向上がより良い成果に結びつくよう強力なリーダーシップを発揮して頂きたいと思います。
もとより飛行安全を確保するために各滑空団体また教育機関、教官の方々が常々非常な努力をされていることは十分存じ上げているところでありますが、この数ヶ月の重大事故の続発に鑑み、とくにグライダー愛好家の特段の意識の向上により、わが国グライダー・スポーツの健全な発達が確保されることを願って本書簡をお送りいたします。 なにとぞ、意のあるところをご賢察頂き一層のご精進をお願い申し上げます。
当協会といたしましても、全国の滑空団体、滑空場あるいは関連機関等の間で効果的な形で飛行安全に有効な共同活動や協力を計りやすくする方法、あるいは器材の安全性向上を実現する体制の整備など安全に関するテーマについて検討し必要な施策を進めてゆく考えであります。役員はじめ会員の皆様にはこの面でも積極的なご協力を心からお願い申し上げます。
社団法人 日本滑空協会
会長 牧野 健